動物病院づくり テクニカルデザイン

№360　2019～2020		2019/12/28
	2019年も年の瀬です。本年も動物病院設計を継続できたのは設計依頼をして下さった獣医師の先生方の英断によります。多くの動物病院計画案を提出しましたが、実現しない計画案も多数ありました。没案になった動物病院計画は当設計事務所の不徳の致すところ、能力の足りないところで、より一層、動物病院建築への精進をせよとの励ましと反省するところです。 　ＡＣプランで設計監理した動物病院は2019年で日本全国の都道府県に広がりました。前年まで依頼の無かった山形県と愛媛県から動物病院設計の依頼を頂き、動物病院設計を始めてから20年弱で各都道府県に動物病院が完成しました。 　建築業界は突出して工事価格が上がり建築土木業界のみが日本で唯一インフレを実現しています。建築工事費用が上がり金の価値が下がる減少が建築土木業界のみで起きており、日銀の2％インフレターゲットどころではない、工事費用4～5割増状況が継続中です。他の業界の追随を許さない建築土木業界のハイパーインフレに近い状況が、長続きするのかあるいは元の鞘に収まるのか、それとも他業界を巻き込んで日本中に広がるのかは、私個人には見通せませんが、工事費用は落ち着いて欲しいと一設計者としては思います。 　2019年は12月30日まで稼働します。2020年は1月6日より始動します。	内子　八日市護国地区

№359　希望的観測		2019/12/27
	日本では1年間に100件以上の新規動物病院が開業しています。毎年、獣医師の資格を新たに取得する方は1000人程度、小動物の臨床を志して動物病院を開業する獣医師は獣医師全体の10～15％程度で推移しています。 　動物病院を専門に設計監理するＡＣプランとしては、開業する獣医師数が増えることは設計監理機会の増加が望めますからありがたい話ですが、現在開業している獣医師の先生方にとって新規開業動物病院が医療圏の重なる地域に増えるのは快い話ではないものと推察します。 交通手段の主流が車になっている現状では、15分以内の車の移動程度で最寄の動物病院に辿り着ける場所ならば感覚としては近隣の動物病院です。車社会が継続する間は動物病院から10km程度の範囲が診療圏と認識可能です。過疎化や老齢化している地域の診療圏は少し小振りに考えたほうが無難ですが、医療行為に信頼が置けるとお客様が感じる動物病院であればさらに広い診療圏を想定しても問題なかろうと思います。 　開業に不安は付き物です。借金をして建物を造り（テナントを改修し）医療機器を購入し開業すると漏れなく借金の返済が付いてきます。開業したものの客が来なければ借金返済に窮し、最悪の場合は診療が立ち行かなくなり借金を抱えたまま閉院に至る可能性も無い訳ではありません。当初の想定通り順調に客足が伸びて、借金を滞りなく返済し、地域の方々からの信用が厚くなれば医療サービスの充実や拡充に向けて施設の拡張や獣医師の増員が出来る可能性もあります。 　あらゆる職種でいえることですが独立開業するのは不安と希望の共存です。近い将来や遠い未来に対して大きな不安を抱いても多大な希望を抱いても実際のところどのようになるのかは誰にも解らないのが現実です。解らない未来に対して不安を吐露したところで物事が良い方向に動くわけではありませんし、不確実な未来に対して大いなる希望を抱いてみても望み通りの未来になるわけでもありません。現実は現在にあり現在を確実な一歩にするためには志向をプラス方向に向けたほうが楽しく明るい一歩を踏み出せるものです。未来の希望実現の確立を高くするのは現在を、現状を、気持ちの良い現実とすることではなかろうかと日々思っています。	高野山　宿坊

№358　充足消費の果て		2019/12/26
	需要が供給を上回る状況ではいわゆるモノに消費動向は集まります。物資が不足すれば不安に駆られて不足物資を欲し、不足物資転売で儲ける輩が現れます。土地が少なくなると我先にと土地を探し、土地転売で儲ける輩がおり、箱物が足りない状況と煽れば箱物が値上がりします。物資の不足は購買意欲を助長し、物資不足に乗じて社会の気分が拡張方向に向かうならば経済は成長し消費は膨張してモノへの消費志向はさらに拡張します。 　供給が需要を上回る状況では消費動向はより安いモノか差別化されたモノに向かいます。差別化は細分化に向かい、同等品で安いモノや高級品で差別化されたモノ消費の二極化は、供給側の販売戦略と相俟って、些細な違いや過剰な機能を付加して多様化します。安いモノも差別化された高級品も同様で、原初の生物がカンブリア期に爆発的に多様化した状況のように多くの種が子孫繁栄に向かって継続の優位性を争うごとく、商品の膨張爆発が起こります。供給の膨張を支える需要を喚起するために要不要に関係なくモノが溢れ、溢れたモノに釣られて惰性的消費状態に陥ります。 　惰性的消費が継続すれば、経済も惰性的にわずかな右肩上がりを続けますが、いずれはモノへの消費は尻すぼみになっていきます。モノへの消費行動が人間の満足度を高めず、モノが飽和する状況になってくると、余分なモノは不要になります。人間は他人が欲するモノを欲する性質を持っているもので他人が欲しないモノを欲する人は少なく、故に他人が欲しないモノへの消費意欲は急速に減退します。生活に必要不可欠な最低限のモノしか商品として売れない状況は私たちが今立っている地点なのかも知れません。	柏の葉動物病院　処置室

№357　潜在する開業希望獣医師へ		2019/12/25
	新規に開業する動物病院の設計をする意欲は十分すぎるほど持ち合わせていますが、新規開業に意欲的な獣医師の先生が居る場所は特定出来ません。開業を目指す先生はどこかの動物病院で日夜獣医療に励み、経験の蓄積と技術向上に努めている場合が多いと思いますが、開業の意欲や要望が知らず知らずのうちに外部に伝わり、開業の噂を当方が聞きつけて都合の良い日時に相談に伺うような事態になる事は全くありません。 　新規開業の設計相談は、ホームページからの申し込みか過去に設計監理をした動物病院の先生方からの紹介があって動き始めます。電話で開業支援の具体例を尋ねられる先生もいらっしゃいます。事の始めは開業する意志を示す事からはじまり、開業場所の当たりをつけ、テナントや土地を探し、設計や建築、資金の相談をするところから始まります。 　開業への第一歩は開業したいという開業意志を外部へ伝える事から始まります。自身の身近な外部に伝えて開業を進めるのも可能ですが、開業支援の専門家が集まるネットワークへの開業相談であれば自らの開業への要望を叶える可能性は遥かに高くなり、設計や建築工事、借り入れや返済等のクオリティにも確実に違いが表れます。 　動物病院開業を数多く手掛ける不動産、ファイナンス、設計、建築工事、医療機器、ロゴ・サイン、ブランディングのプロが支援するプロセスを踏んで完成する動物病院は開業と同時に大きなアドバンテージを持ち得ます。近い将来に開業を希望する獣医師の先生方、『開業希望』と『開業相談要望』を電話あるいはメールでお伝え下されば、日程調整の上、日本中何処へでも相談に伺います。	動物病院光心堂

№356　入院室ケージ棚上コンセント		2019/12/24
	入院室のコンセントは通常入院ケージ前面の100㎜～300mm程度の天井に配線ダクトを取り付けます。配線ダクトにはリーラーコンセントと呼ばれるぶら下がりコンセントを取り付けます。入院ケージ内でヒーターや輸液ポンプを使用する際の電源コンセントとしてリーラーコンセントを使用します。 千葉県柏市の”柏の葉動物病院”の入院室は入院ケージ上部に棚を設け、棚の厚みを利用してコンセントを設置しています。各入院ケージの上には接地極付き（アース付き）2口コンセントが1ヶ所づつ付いています。天井からブラブラとコンセントが下がる様が嫌いな方には納まりの良いコンセントは好評です。ぶら下がりコンセントが無い方が上部棚も使い易くなります。見栄えも使い勝手も高感度が高い入院室ケージ上部のコンセント付き棚ですが、一つ残念な事は、天井配線ダクト方式よりも施工コストが上がります。どの程度コスト高になるかは設置する棚の見付け長さ（幅）に拠るのですが、大雑把にコストを捉えると十数万円程度のコスト高が見込まれます。 入院室の見栄えや使い勝手に気を使う先生方にはお勧めの入院室の仕様です。	柏の葉動物病院　犬入院室

№355　ＡＩ生き残り		2019/12/23
	最近はAI進化に伴って人間から奪われる職業に関して喧しくなっています。AIに詳しい訳でもなく未来を見通す力も持ち合わせてはいませんから人間から剥奪されるのがどのような職業かはさっぱり解かりません。同じ作業を繰り返すことや経験則から判断できることはAIが処理するようになったほうが効率も良くミスも少なくなるのでしょう。 　経済学者や有識者、評論家はマネジメントとホスピタリティとクリエイティブが人間の手に残る仕事と言っています。言われてみれば、なるほどそのようなものか・・・とは思いますが、具体的な仕事に落とし込んでいくと上記の範疇に含まれる仕事の仕分けは簡単ではないと思います。動物病院サービスは多くの部分がおそらくホスピタリティに属すものと思います。動物への医療提供と飼い主への診断情報提供と安心を醸し出す行為をAIが取って代わるためにはかなりの時間を要するであろうと想像します。 　建築設計は8～9割程度の仕事はAIが担うようになって行くだろうと思います。残る1～2割、建築全般のマネジメント業務とクリエイティブの領域に足場を置く建築士は将来の建築設計でも活躍の場を見つけられるのでしょう。現状、建築士は獣医師よりも飽和状態になっており、設計事務所が現在の半分以下になっても十二分に機能するような状況です。現在の設計事務所数の十分の一に数が減っても大きな問題はなく、むしろ建築士にとっては能力を発揮できる機会が増えるものと思います。 　いずれやって来るものなら、AI時代は早々にやってきて欲しいものと個人的には思っています。	柏の葉動物病院　猫入院室

№354　テナント既存インフラ確認		2019/12/22
	テナントを選定する上で既存テナントのインフラ確認は必須です。既存テナントインフラとは水道、下水道、電気、ガスをテナントに引き込む配管です。 　□水道管の口径と位置、既存管状態の確認 　□下水道の口径と位置、既存管状態の確認 　□引き込み電気容量、種類の確認と最大受電容量の確認 　□ガス管位置と既存管状態の確認 　上記の確認をテナント内見の折に行います。既存管類は床下や地面下に埋設されていますので、テナント内見時に不具合が見つからない場合もあります。テナント工事着工後でなければ既存管状態の確認が出来ない場合は、既存管の継続使用に支障がある、あるいは問題が生じる可能性が見つかった段階で不動産業者に報告を行い既存管の適正な処理をテナントオーナーが行う事を事前に確認しておく必要があります。 　工事着工後の既存配管の不具合に関しては、想定外の補修費用が発生する可能性もあります。竣工年から数十年以上経過したテナントや長い間借り手が付いていないテナントの既存配管は使用できない程度に損傷していることも多々ありますから、テナントの既存インフラの確認と補修についてはテナント契約前の事前確認と不具合発覚後の補修工事費用負担についての確認は必須事項です。	動物病院光心堂　検査台

№353　既存テナント工事範囲		2019/12/21
	テナントの工事可能範囲もテナント契約前に確認を要します。動物病院にはサインや看板、外部照明が付きます。外壁の再塗装やタイル張り、外装の変更を行う可能性もあります。既存テナントのサッシ交換や出入口の変更、テナント前の床タイルの張替え等、建物の外部仕上に関わる工事の可能性もあり、テナント契約前に不動産業者及びテナントオーナー・ビルオーナー等に工事可能範囲の同意を得ておいた方が契約以後の設計及びテナント工事は円滑に進みます。既存排水管や雨水排水管は建物の共用部分に当たりますから再塗装等に際しても事前に許諾が必要です。 　事前説明や事前許諾を取らずに共用部に当たる既存物に手を加えても工事後以前の状態に戻すよう要望される事もありますから、テナント外部の工事範囲に関しては、事後に齟齬が生じないように事前に書面等での確認をしたほうが良い事項です。	動物病院光心堂　OPE準備室

№352　ビジネスのアンカー		2019/12/20
	ビジネスの現場でアンカーになる数字が提示されると、提示後の交渉がこの数字を軸に回転するようになります。提示された数値がアンカーとなるには、諸条件が揃う必要がありますが、諸条件も参加者や打合せ場所、信頼度や根拠によって、ばらつきがあり同じとは限りません。優れた経営者や遣り手の営業マンはこの手のアンカーを打つのが上手く、打ち込んだアンカーを梃子に様々な商談をまとめていく手法をいくつか持っているものと推測します。 　非常に残念なことですが、当事務所の代表である私も当事務所の所員もビジネスのアンカーとなるような数字を打ち込む方法を心得ておらず、設計契約の話を上手くまとめる能力を有していません。設計事務所の多くは設計に関しては相応の能力を持っているのですが設計契約を取る能力は人並み以下というのが現状であろうと思います。 　他人が有しているすばらしい能力を欲しがるのは人間の常であろうと思いますが、無いものは無く、出来ない事はできないと清く判断することも生きる方法のひとつには違いないと決め込んで良いのか悪いのか、少々迷っているというのが本音でしょうか。	動物病院光心堂　夕景

№351　言葉を建築に		2019/12/19
	英語を理解でき日本語も理解できれば英語で話す内容について日本語への翻訳は不要です。お互いに英語で直接話せば事は足ります。仏語と英語が理解できる方と英語と日本語を理解できる人は英語で理解を深めることになります。お互いに英語が堪能であれば問題は無いでしょう。言葉はお互いを知るために重要な役目を果たします。気持ちや状況や意志を伝えることが出来る言葉は人間が社会生活を営む上で考え出し研ぎ澄ましてきた文化の最たるもののひとつです。 　言葉による意志の伝達は人間が共同で作業を行う上で欠くべからざる道具になっています。建物をつくる上でも言葉は重要な役割を果たしますから、言葉の遣り取りから感情を汲み取りクライアントが欲するものの姿を想起して、言葉を建築に翻訳しなければ建物にはなりません。建築士の頭の中に国語辞典や英和辞典のような言葉を空間にする建築辞典が入っている訳ではありませんので、クライアントの言葉から建築士が想定する空間は其々で、同じ言葉から同じ空間を想定する確率は低く、同じ言葉から想起する空間は多様であろうと想像します。建築士は言葉を設計に翻訳し、現場監督は設計図を建築に読み解き、大工は設計図を理解し材料を加工し、各職人は現場監督の指示を仕上に吹き込み、多くの人たちの手を経て建築は仕上がります。	動物病院光心堂　南側面

№350　かしわの葉動物病院		2019/12/18
	2020年1月初旬、かしわの葉動物病院が開院します。 　床・壁・天井は白を基調色にしてドア・カウンターにネイビーブルー（濃紺）を配した内装、外装は荒い素材感の石肌タイル壁をミッドナイトブルー（鉄紺）の落ち着いた色合いの壁で巻き込み、濃茶の天然木を緩衝材としています。既存テナントを改修した動物病院ですから既存テナントの形態はそのまま残し建物全体はシックな動物病院になっています。道路側や駐車場側から待合ラウンジの様子が見え動物病院の雰囲気が外部からも感じられるオープン感覚のクライアントゾーンです。 　広く明るく清潔感のある待合ラウンジと受付カウンター、ペットと共に使用できる広い待合トイレ、ペットの逃走を防ぐ風除室、余裕のある診察室が3室、処置室は動物用シンクと簡易な手術ができる診察台が置ける程の広さがあり、処置室から独立する検査コーナーと薬局、OPE室、X線室、犬と猫の入院室と3室の大型犬用入院室、テナント動物病院として十分な医療施設を備えています。、 　初心者でも安全な駐車が出来るよう駐車スペースも広く、駐車台数も22台を確保しています。 柏市や柏市近辺の動物医療を支える動物病院として地域の皆様に愛される動物病院になることを願っています。 柏の葉動物病院　住所：千葉県柏市花野井712-8	かしわの葉動物病院　外観パース

№349　プレ傑作		2019/12/17
	設計も建築も進行途上物件には可能な限り最大限の時間と意識を注ぎます。モノやコトの大小に関わらず、進行途上物件には出来うる限りの注意を払います。 　進行途上物件を傑作に仕上げようなどという思いは持っていませんし、傑作をつくろうと意気込んで計画を進めることもありません。傑作を、意図してつくれるほど冴え渡る能力を持っているならば、あらゆる計画が傑作足り得るものと想像します。 　進行途上物件に向かう姿勢はいつも変わりありませんが、現在の建築が最高傑作でなければ、次回の建築は傑作足り得るのは、別に不思議なことではなかろうと思います。さすれば、次回の建築は傑作の可能性が常にあり、次次回の建築にも傑作足り得る可能性は少なからずあるという理屈も立ちます。建築は永遠にプレ傑作。	動物病院光心堂　東側道路面

№348　ワカッテツクル ローコスト		2019/12/16
	ローコスト建築は建築を良く解っている建築士がつくるものです。ローコスト動物病院建築は動物病院建築を良く解かっている建築士がつくるものです。動物病院建築についての理解が浅い建築士がつくる動物病院の工事費用が安いからと言って、完成した動物病院建築がローコストであるとは言い難いのです。動物病院建築への理解が浅い建築士が提案する安い工事費の動物病院は動物病院としての機能が不足しているか設備が不足している、あるいは下地や仕上げの選択に考慮を欠いているか防音や防臭の知識に乏しい結果、ローコストになる可能性が高く、所謂動物病院としては欠陥の多い建築になります。 　ローコスト動物病院は動物病院機能と医療サービス及び医療環境について広く理解する建築士が、仕上げや仕様を検討しクライアントに説明を尽くした上でコストダウン計画を進めることで始めて実現します。動物病院建築について良く解らない状態で設計を進めるのではなく、動物病院建築について良く解った上でローコスト提案を進めるのがローコスト動物病院としては是であろうと思います。 動物病院テナント開業支援：コンパクトサービス（短期開業と低予算工事）	動物病院光心堂　壁面サイン

№347　陽射しを祈る		2019/12/14
	引き渡しを終えた動物病院の竣工写真撮影に行ってきました。動物病院の開業前内覧会の前々日、動物病院の医療設備がほぼ揃う段階での竣工写真撮影に臨めるのは、撮影段取りがスムーズで、写真完成度も高くなります。建物外観写真は被写体に太陽光が当たり庇や壁の影が鮮明で、鮮やかなコントラストが出ることで立体感も増し、空気も乾燥気味の方が建物のエッジが効いて引き締まった外観写真になります。さらに欲を言えば、建物背景の空は深く濃い青色、群青色の空で、線状の一筋の雲が写れば最高の一枚になります。もっとも、被写体になる建物が魅力的でなければ、外部条件が揃ったところで、美しい建物外観写真にはなりません。 　建物の夕景写真も撮影します。日の入りの時間から20分程度が夕景写真の本番です。短い時間の間に刻々と釣瓶落としのように変わっていく空の色と深さ、太陽の光が白い光線から赤い光線に変わり紫色を経て濃紺に変わっていく背景に、窓明りが徐々に強くなって室内が浮かび上がる様を写真に刻んでいきます。 　竣工写真撮影には、お日様の光と青い空が欠かせません。	動物病院光心堂

№346　見積解読の巻		2019/12/13
	見積書の読み解きは小説を読むようにページをめくるとワクワクするような楽しみが待っているわけではありません。物語が壮大に展開して劇的なクライマックスを迎えることもなく、見積書のクライマックスと思しき工事費総額は一番最初のページに太く大きく印字されています。見積書の最初のページに既にクライマックスとなる工事費総額が記され、次ページには各工事ごとの項目費用が並んでいますから、2ページ目までで工事費の総額とおおよその内容がわかってしまうなんともページ数の少ない書きモノです。2ページ目以降は、素人に解らない専門的な言葉で素人には決して理解できないように面倒臭く工事内容や材料名が並び、各々の数量や単価が全体のあらすじ等とは全く無関係に見積者の恣意的な思いで淡々と書き込まれています。 　見積書に書かれているのは工事項目、製品名、数量、単価、と金額だけです。設計図面から工事業者が工事に必要な各々の工事項目と細目を拾い出し、数量を計算し、市場単価を入れ込んで見積書は作られます。読み慣れなければ読み難く、数字に弱い方は見ないほうが健康でいられ、数字にアレルギー反応を示す方は決して見ない方が良いであろうと思います。 　しかし、簡単なことではありませんが、見積の中身を解読出来なければ工事業者の力量判断も出来ないのも事実です。故に建築士は工事業者から提出される見積書にはじっくりと目を通し施工の段取りや構法を読み取ろうと努力します。味気なく数字が並ぶ見積書ですが、数字から読み解かなければならない事は数多く数字の裏側に隠れています。	動物病院光心堂　入院準備室

№345　視力検査のC		2019/12/12
	Cに形状が近いのでアルファベットのCかと思いきや、ランドルト環という記号らしいことを最近知りました。ランドルトは、19世紀後半から20世紀初頭のフランスの眼科医なのだそうです。 『視力は、確認できる最小視角の逆数で表され、１分の視角を確認できる能力を、視力1.0といいます（１分は角度を表す単位で、１度の60分の１の角度）。例えば、確認できる最小視角が２分なら視力は１÷２で0.5、10分なら1÷10で0.1ということ』ですが、何を言っているのか私には良くわかりません。 　視力検査は、視力表から５メートル離れて行なうようです。因みにダーツの的までの距離を調べたところ244㎝なのだそうで、視力検査表までの距離は随分と遠いのだなあ〜と思うだけの自らの凡人度に《カツ》です。	横浜市の動物病院計画

№344　仕様と見積		2019/12/11
	動物病院基本構想案の概概算見積もりは平均的な仕様の動物病院を想定して行います。平均的仕様と言われてもしっくりこない方が多いと思います。動物病院の平均的仕様はテナントの場合は10年後の使用に耐えうる仕上材であること、外部に音漏れの無い防音仕様、適切に使用すると院内に臭いが残らない換気計画、必要最低限以上のカウンターや棚類の設置、動物医療が円滑に循環する機能と耐久性のある材料選定が平均的な仕様になります。戸建動物病院の場合も同様ですが、戸建動物病院の場合はテナント動物病院よりもスパンの長い使用が求められますから耐久性能や設備仕様はテナント動物病院よりも高く想定して概概算見積を計上します。 　床・壁仕上げの仕様を落とせば見積金額は下がりますが、耐久性能も下がります。仕様を落とす事によってメンテナンスコストが上がりランニングコストも上がり補修頻度も多くなるでしょう。天井の仕様を落とせば見積金額は下がり、その他のメンテナンスコスト等が上がりはしませんが、待合ラウンジや診察室の声や音が天井に反響して騒々しい室内になります。診察室では会話の聞き取りに支障が出て、入院室やﾄﾞｯｸﾞﾗﾝの音も院内に響き易い状況になります。各室の下地性能を落とすと工事費用は減額できますが、壁の強度や耐久性能が下り防音効果も低下します。 　換気扇の能力を下げる、換気扇数を減らすことも工事費減額になりますが、相応の院内換気の検討を要します。給排水計画・空調設備計画・照明計画等も数を減らせば工事費用も下がりますが無謀に数だけ減らしても良好な院内環境は望めず、医療サービスの低下を招きます。 　何事もバランス良くつくらなければ、建築は機能せず、バランスを欠いた建物は将来の使い勝手に問題を抱えます。基本構想案の初期提案は計画する動物病院が円滑に機能し、医療環境が十分に整い、医療サービスの向上が見込める案を前提として概概算見積を計上しています。	横浜市の動物病院計画 平面図

№343　変化を楽しむ		2019/12/10
	あらゆる集団は既定路線に乗った時から変化を厭う集団に変容します。 保守と革新の差は微妙で些細な時差から生じ、隙間程度の立ち位置の違いから亀裂は育ちます。情熱の有無や方向、欲望の大小や落としどころの違いから変化に対する意識には温度差が生まれます。 　生物は日々変化を続けながらも、短い期間では平衡状態を保ちつつ生命維持を図っています。毎日、会っていると気づかない変化も長い時間をおいた後は変化に気づくものです。生物も動的平衡状態を維持しながら時間経過を体内に感じて環境変化に適応しています。 　変化を厭わず、変化を受け入れ、変化を楽しむ姿勢こそが生きる上では大切であり、環境に対応しようとする日々の変化こそが、現状より将来の安定をもたらす術であると気づかなければならないのですが・・・人間万事塞翁が馬。	横浜市　テナント動物病院計画

№342　最善解への道程		2019/12/9
	動物病院設計でもその他の建築設計においても問題解決の方法は一つでは無く多岐多様です。ひとつの問いにひとつの答えが用意されているのは学校の宿題位なもので、ひとつの問いにはいくつかの解決手段があり、解決方法があります。課題への対応は、現状の立ち位置を鑑みての最短解と立ち位置の違いによる条件解があり、最適解を探す前に今置かれている現状の条件整理を要します。 　どの方法でどの解に向かって照準を合わせるのかによって、結果は微妙に違ってきますが、その時点での最適解を選定し、周辺解を検討するのが常道です。 　動物病院設計においても問題に遭遇する場面は多々あります。同じ問題でも建物条件が変われば解決方法は変わります。建物構造によっても解決方法は変わり、建物規模によっても変わります。クライアントのこだわり、立地する地域、施工会社の能力によっても解決方法は違いますから、答えに至る方法や道筋を可能な限り探らなければならず、答えさえも同じになる事は稀です。	動物病院光心堂　診察室

№341　基本妄想案		2019/12/7
	動物病院妄想案を動物病院構想案のサブ提案として提出させていただければ設計提案での設計者の欲求不満はある程度解消されます。 　初回ヒアリングから最初に提案する設計図と概概算見積・全体工程スケジュールが基本構想案です。動物病院の平面図と平面図実現に要する工事費用の概概算見積書、設計から工事着工及び建物竣工に至るまでの全体工程を示す工程スケジュール表が基本構想案になります。ヒアリングでの要望範囲内で動物病院計画が成立する想定で計画を立案するのが基本構想案です。建物構造や構法、工事予算や開業希望時期を睨みながら実現可能な範囲を模索検討し要望を建築化する過程を通して基本構想案は形作られます。予算条件や時間の制約から提案したくても提案できない途中案は形にならずに埋もれていきます。埋もれた案の中には動物病院として秀逸で一度で良いので陽の目を当てたい計画もあります。しかしながら、実現可能性が低ければ提案すること自体が無駄に思えます。設計者の単なる自己満足に過ぎないのですが、基本構想案の後に今回提案のおまけとして動物病院基本妄想案を添えて提出させていただけると、設計者がどのようなことを考えながら基本構想案を提案しているのかの過程が少しばかりは解っていただけるのではなかろうかと思う次第です。 　設計構想の思考過程が少しばかり理解できたところで基本構想案への評価が変わる事はないでしょう。しかし、基本妄想案は実現できれば喜ばしい計画になるであろうと妄想は膨らむのです。	調布市　テナント動物病院

№340　診察への想い		2019/12/6
	千葉県柏市に柏の葉動物病院が竣工しました。2020年1月にはOPEN予定です。動物病院の基調色は青色よりも深く濃いネイビーブルー、奥行きを感じる色です。動物病院外観はネイビーブルーの箱型の中に自然石割り肌風の荒めのタイルを入れ込んでいます。窓枠とルーバーとしてセランガンバツ材を濃茶に塗装し、建物外観の印象は深い海の色ネイビーブルー＋淡い薄茶の石肌＋自然木の濃茶のナチュラルな組み合わせです。 　待合ラウンジと診察室は白を基調にした内装と家具と扉建具をネイビーブルーでシンプルにまとめていますが、あまりにもスタイリスティックにはならない様、待合ラウンジの壁にはレトロな白色のレンガタイルを張り込んで柔らかさを演出しています。硬すぎず柔らかすぎず緊張感が在り過ぎず温かみが少し残るような印象の待合ラウンジと感じて頂ければ設計者としては成功の域に入っているものと思っています。 　診察室には犬、猫の大判白黒写真を壁一面に貼り、冷たい印象の多い診察室を暖かい雰囲気にしています。診療時間の緊張感を少しでも柔らかく楽しくなるよう、田中院長の要望です。田中院長の診察への想いを強く感じる診察室の微笑ましい写真です。 　柏の葉動物病院が地域の皆様から愛される動物病院になることを願っております。	柏の葉動物病院　診察室

№339　動物病院光心堂　開院案内		2019/12/5
	12月3日に愛媛県松山市の動物病院光心堂の引渡しを終えました。12月14日（土）、15日（日）10：00～14：00に内覧会が開かれます。松山市南高井町近辺にお住みの方は内覧会に足を運んで頂きたくお願い致します。 動物病院光心堂は松山自動車上の高架沿いの南西側に位置しています。広く入りやすい16台分の駐車場と駐車場内通路にも余裕があり、運転の初心者でも安心して利用できる駐車スペースがあります。診察室は2室、伝染病用の外部から直接利用できる特別診察室も用意しています。待合ラウンジは10人程度が座れるスペースがあり、待合トイレも用意しています。入院室（犬用・猫用）2室、OPE室、X線室、検査室、入院準備室等々、地域のホームドクターとして十分な医療設備を準備し、地域医療の向上を目指して行きます。犬・猫・ウサギ・エキゾチックアニマルも診療可能です。2019年12月16日に開業します。 動物病院光心堂 住所：愛媛県松山市南高井町1711-12 TEL：089-975-3969 HP：http://koushindo.com	動物病院光心堂　開院案内

№338　内子座		2019/12/4
	12月3日、内子座に行きました。内子座は愛媛県喜多郡内子町にあります。内子座の界隈には八日市・護国の町並みが残っています。当然ですが手付かずで町並みが現在の生活とともに残っていることは稀ですから、地域の努力と町に住む方々の法外な忍耐の上に昔ながらの町並みが残っているものと思います。季節は冬、火曜日平日の昼下がり、観光客は疎ら、土日は開いているものと想像される店も灯は無く、閑静な町並みに地元の小中学生が時折行き交う中をゆっくりと歩を進めて古き良き町の佇まいを堪能させていただきました。 　明治から大正、昭和初期から中期を感じるサインやカンバン、大正モダンから昭和レトロな商店建築が並ぶ様に時間の経過が心地良い体験でした。 　内子座は凛とした佇まいの建築です。建築としては、訪れる人を案外素っ気なく出迎えてくれる感じで、知り合いの家の縁側から直接出迎えられて『お入り』と手招きされた感覚に近く親近感の湧く建物です。外部と内部の距離感も庶民的、自然光をこれでもかというほど取り入れ、空が間近な劇場空間、客席と舞台も大層オチコウゴザイマス。手を伸ばせば何物にも手が届くような感覚の芝居小屋で、役者の息遣いを感じながらの臨場感を味わえる場所です。芝居も芝居を楽しむ観客も楽しめる小宇宙が浮かんでくるようです。いずれこの場所で小宇宙を味わいたい気持ちになりました。	内子座

№337　素晴らしき日本ブーム		2019/12/3
	数年前からメディアを通して目に付くようになった日本の素晴らしさの再発見ブームは少なくとも2020年のオリンピック辺りまでは継続しそうです。オリンピックの結果次第ではその後も素晴らしき日本ブームは続くような気がします。世界中の国が内向きになり、自らのアイデンティティを内向きに探しています。立ち位置の安定感が確実に揺らぎ、精神の安寧も将来も霞んだ未来にしか見えない現在にいること、自然現象が想定を上回り科学的な数値と自然の力量のバランスが崩れ、自然を御し得ないもどかしさ、積み上げてきたはずの安全の脆さが露呈する現実を誰もが感じ始めているのでしょう。素晴らしき日本ブームは拠り所を探す迷える仔羊の群れと同様、迷える人間の群像です。素晴らしさを集め、素晴らしさを深掘りし、素晴らしさを誇ったところで安寧は遠く平和は訪れません。素晴らしき日本ブームは危うさからの一時逃避には役立ちますが、逃避から覚めた後にも現実は立ちはだかります。ブームに乗ったところで現実を変える処方箋は見つからないことと思います。見るべき場所は現実の足許でしょうね。	内子座　ガラス窓

№336　改修に悩むよりも相談		2019/12/2
	悩んでいても何も解決はしません。悩むことに時間をつぎ込んだところで、多くの時間を費やした割には満足できる解決策には巡り会えないものです。“悩むことに沢山の時間を消費した私・・・素敵かも・・・”程度の自己満足的なナルシスト感情しか得られるものはありません。心の平静を保つため、自己陶酔が好きな方には、悩むことも良い方法に成り得るかもしれませんが、健全な思考と行動を旨とする方は悩む時間があるのならば、適切な相談先を探して、早々に相談した方が解決の糸口は探しやすかろうと思います。 適切な相談先と簡単に書きましたが、世の中で適切な相談先を見つけるのがかなり難しいことで、相談先を間違えてしまうと、当初の目的とは異なる方向へ歩みを進めてしまいます。 動物病院の改修に関しては悩むより相談すること、相談先は慎重に選択すること、適切な相談先を探すことに集中すること、をおすすめします。	検査台とコンセント穴

№335　動物病院の土地・テナント探し		2019/12/1
	設計条件が良く工事条件も良好なテナントが東京23区内にあるだろうと期待するのは個人の自由です。東京都下でも条件の整ったテナントを見つけるのは近年では難易度が高い所業で、条件の良いテナントは想定以上に高額な賃料が課されていたり、入居条件が煩雑なのが一般的です。 　動物病院に適した土地やテナントは都市計画上の用途地域制限や道路との接道条件の検討を要し、車の出入りや歩行者の動線も土地選定時には考えておかなければなりません。加えて、土地やテナントのインフラ条件（電気・水道・下水道・ガス等）の確認も必要条件の一つです。自然災害時の土地状況の事前調査も必要です。 　近隣環境を確認し条件を整理して近隣対策を見通すことも候補地選定には欠かせませんから、動物病院に適した土地やテナント候補地は決して潤沢な状況とは言えません。また、動物病院への専門知識に乏しい不動産業者との遣り取りは繁忙な獣医療の妨げとなり時間の浪費とストレスフルな状況を加速します。 　動物病院の企画〜設計〜監理〜施工に携わってきた建築士・宅建士が獣医師の顧客ニーズに寄り添い要望を叶える土地・テナントの良質な物件情報を提供するネットワーク業務の一環として不動産業務を立ち上げます。動物病院の開業、移転、建替用地をご希望の方のご利用をお待ちしております。 土地・テナント相談 株式会社 伏見屋　 　～（株）イトレス&ACD業務提携事務所～ TEL：03-5577-6068 https://wangdangdoodles.jimdo.com/real-estate/for-animal-medical-facilities/	連：REN REAL EXPERT NETWORK

№334　動物病院環境デザイン		2019/11/30
	動物病院の内部環境は、設計である程度網羅できます。加えて専門的な監理継続によって工事業者との協業に相乗効果が生まれ、より質の高い医療環境提案ができます。 　動物医療施設の外部環境は小さな意味では敷地内環境及び周辺近隣までの範囲です。全体施設計画から駐車場や緑地の配置、近隣と良好な関係を作り出す全体配置計画、音や臭いを含む空調換気対策です。大きな意味では集客や誘客を含めた動物医療施設の医療圏に関わる環境計画提案になります。集客及び誘客に関しては土地の選定時に検討すべき事項であり、選定した土地への視認、誘導、安全確保を担保しつつ、視野の広く見通して動物病院計画の骨子を検討する作業になります。加えて、サイン、ホームページ、メディア対策と連携した色彩計画やブランディングも大きな意味での動物病院環境デザインと言えるでしょう。 　環境計画を推進する先導役として、動物病院計画の全体を俯瞰するマネジメント業務の役割は今後大きくなっていくものと想像しています。	動物病院環境デザイン

№333　板金納まり		2019/11/29
	板金の納まりと聞いても何のことなのか判らない方が多いと思います。建築現場では材料と材料を繋ぐ箇所や異なる材料を繋げる箇所が頻繁に出てきます。壁や屋根は継ぎ目の無い大きな一枚の板状の材料で作ることが出来るならば外部と内部が明確に隔てられて雨風の浸入を抑えられます。大きな板状の材料を使って折り紙の鶴を折るように建物をつくることができれば雨風に対しての防備は万全に近い状態になるでしょう。しかし、巨大な建築物を作る場合でも、材料は工場のライン上で生産され、工場から建築現場へ搬送される際にも搬送の許容範囲以内で無ければ材料の移動だけでも莫大な費用を要します。残念ながら巨大な板を現場に搬入して折り紙を織り上げるように建物をつくる事は現状では厳しく、物理的･経済的・技術的・地理的な様々な事情から材料の寸法は制約を受け所定の寸法内外に収まるよう仕向けられています。 　一定サイズの材料と材料を繋げる、異なる材料を繋げる等、建築現場では納まりに苦心しながら多くの職人たちが汗を流しています。設計者はモノとモノが触れ合う納まり部分の詳細には知恵と経験を導入して図面を描きます。建築現場で金属の薄板を板金と呼びます。板金納まりとは金属の薄板の接合部の納まりを指します。金属薄板の厚さは0.3㎜～0.5㎜程度で主に屋根や外壁の仕上材料として使用しますので、建築現場では板金収まりは至る処にあり、建物の見栄えの良否を決める分岐点にもなります。	外壁板金納まり

№332　胡乱な指定席		2019/11/28
	飛行機や新幹線では事前に席を確保します。好みの席を選ぶことができるとほんの少しですが微笑ましい気分になれます。新幹線は3シート席の窓側で車両の一番後ろの席がほんの少し幸福になれる席です。飛行機は通路側の可能な限り操縦席に近い辺りで手元灯が左側にある席が幸運な気持ちになれます。人それぞれ好みの席は違うものと思いますから、幸福感にも多少の違いがあるのでしょう。 　指定席に先んじて見知らぬ人が座っている時、指定席に近づく足がたじろぎます。よもや、私の席は確保されていなかったのではなかろうかと余念で頭が膨らみ、懐中から切符を取り出して瞳を大きくして指定番号をマジマジと睨み、かなり高い確度で当方が正しいと確認した段階で、何食わぬ顔で我が物顔に席を占有する人物に『席を確認して頂けませんか』と耳元で囁きます。99％或いは十中八九指定席は当方の陣地となり宿敵はいそいそと席を移るのですが、中には豪の者もおり、席の所在を譲ろうとせず指定券の確認もせずに『お前が間違っているのだろう』好戦的な輩もおり、対応に苦慮することもあります。 　指定席を間違えるのは致し方ないことと思いますが、席を巡っての好戦的姿勢は控えて頂きたいと思っております。	動物病院光心堂　受付カウンタ－

№331　地の糧		2019/11/27
	ジイドの書『地の糧』の一節。 「ナタナエルよ、君に情熱を教えよう。行為の善悪を判断せずに行動しなくてはならぬ。善か悪かを懸念せずに愛すること。・・・私は心中で望んでいたものをことごとくこの世で表現した上で満足して、あるいは全く絶望しきって死にたいものだ」 　様々な解釈はあると思いますが、情熱はジイドの地の糧の一節に集約されています。人間としてこの世に生を授かった身としては平穏無事に人生を過ごすよりは成功や不成功は別にして突破を試みる野心や使命感を持ち続けたいと願います。	千葉県柏市　道路端の花

動物病院設計　テクニカルデザイン執筆　イトレス＆ACD　土｀田孝司

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